作:方 軼羣 絵:村山 知義 訳:君島 久子
〈福音館書店〉
長年、読みつがれている絵本の一冊です。
幼少の頃出会い、心に残っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
『しんせつなともだち』は雪が降り積もり、食べ物が少なくなった森の動物たちのお話です。
雪の降る寒い日に食べるものを探しに出かけたこうさぎが運よく2つのかぶを見つけます。
ひとつを食べて、もうひとつをお腹を空かせているであろう友だちのろばの家に持っていきます。
しかし、ろばは留守でそっと置いて帰りました。
帰ってきたろばは誰かが置いたであろうかぶを見つけましたが、さつまいもを見つけて帰ってきていたので、そのかぶを、こやぎに届けることにしたのです。
こうさぎからろば、こやぎ、こじかへとかぶは届き、こじかはこうさぎに届けました。自分の元にかぶが返ってきたことにびっくりしたこうさぎは、親切な友だちが届けてくれたことに気がつくといったストーリーです。
小さな子どもたちにもなじみやすい動物ということ、そして、繰り返しの文章がシンプルでやさしく、小さな年齢の子どもから親しむことができます。
友だちとの関係も深まり、相手の気持ちや物事の関連性が理解できる年齢くらいになると、さらに深く読むことができます。
お家の方や自分の周りの方から、思いやりを受けるだけでなく、自分が与えることの喜びを少しずつ感じられるようになった子どもたちの心の肥やしとなるメッセージが取り入れられています。
これから冬になっていきますが、季節を感じられつつ、温かい思いやりと丁寧な絵が子どもだけでなく、読み手の大人にも心に奥深いものを残してくれそうです。
暖かい部屋で、温かいお家の方の声でほっこりした気持ちになれそうな素敵な絵本です。